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ローレンツ変換の形式は光速度一定とは無関係

概要

Lorentz変換は(その形式だけなら)、光速度一定やMaxwell方程式とは無関係に、次の4つの一般的な要請だけで決まる。

  • 時空の一様性
  • 空間の等方性
  • 運動の相対性
  • 変換が群をなす

大まかな議論の流れは以下の通り

  • 時空の一様性から変換は一次変換に限定される。
  • 空間の等方性と運動の相対性から、変換は速度 v の偶関数 E を含んだ以下の形式だけが残る。

 \displaystyle x' = \frac{x - vt}{\sqrt{1 + Ev^{2}}},  \quad  \displaystyle t' = \frac{t +Evx}{\sqrt{1 + Ev^{2}}}

  • 変換が群をなすという条件のもとでは、 E は定数以外にはあり得ず、 E = -1/c^{2} のとき Lorentz変換と一致する。

導出

変換 ( O系から O'系)は、時空の一様性から一次変換に限定される。

 \qquad x' = C_{(v)}(x  - vt), \quad  t' = A_{(v)}t + B_{(v)}x

逆変換 ( O'系から O系)は、運動の相対性から

 \qquad x = C_{(-v)}(x'  + vt'), \quad  t' = A_{(-v)}t' + B_{(-v)}x'

逆変換を  x', t' について解いて以下を得る。

空間の等方性により  B は奇関数、 A, C は偶関数であり、 後の計算の便宜のため、未定の偶関数  E を導入して、 B_{(v)} を vE_{(v)}C_{(v)} で置き換えた。 係数の関数は全て偶関数になるので引数を省略している。

 \displaystyle x' = \frac{Ax - vCt}{C(A + Ev^{2}C)},  \quad  \displaystyle t' = \frac{t + Evx}{A + Ev^{2}C},  \quad

上記を元の変換( O系から O'系)と比較することで、  A=C=1/\sqrt{1+Ev^{2}}を得る。 こうして、未定の偶関数 E を含んだ以下の一次変換だけが残る。

 \displaystyle x' = \frac{x - vt}{\sqrt{1 + Ev^{2}}},  \quad  \displaystyle t' = \frac{t +Evx}{\sqrt{1 + Ev^{2}}}

さらに、変換が群をなすことから  E は定数以外にはあり得ず、  E = -1/c^{2} とおけば、Lorentz変換と一致する。

補足

時空の一様性

時空の一様性は、物差しを目盛り沿って前後に動かしても式(法則)が成り立つということ。 直感的には、変換に高次の項を含むと原点のシフトに対して不変性が保てなくなる。ので、 一次変換に限定されるという理解で良いだろう。一次変換の一般的な形式は

 \qquad x' = Cx + Dt, \quad  t' = At + Bx

だが、議論を簡略化するため、式の簡略化(係数の削減)を行った。簡略化しても議論の本質に変わりはない。 具体的には、 O'系の原点に注目して、座標  x'=0 x = vt を上の式に代入すると、

 \qquad 0 = Cvt + Dt = (Cv + D)t

これは t に依らず成り立つので、 D = -Cv である必要がある。

空間の等方性

空間の等方性は、物差しの左右をひっくり返しても式(法則)が成り立つということ。 ここから、変換の係数の偶/奇が定まる。 x, v の符号を逆転すると、

 \qquad  -x' = C_{(-v)}(-x  + vt)

を得る。元の式と比較することで、  C_{(v)} = C_{(-v)} であることが分かる。つまり C は偶関数である。他も同様。

変換が群をなす

 E が定数になることは、結合則が成り立つという条件から導ける。 具体的には、 O \rightarrow O' \rightarrow O'' という二段階の変換と、 O \rightarrow O'' という直接変換について考える

 O' \rightarrow O'' は、

 \qquad x''=C_{(v')}(x'-v't')  \qquad t''=C_{(v')}(t'+v'E_{(v')}x')

 O \rightarrow O' \rightarrow O'' は、 x', t' を代入して、

 \qquad x''=C_{(v')}C_{(v)}(x(1-vv'E_{(v)}) - (v + v')t)  \qquad t''=C_{(v)}C_{(v')}(t(1-vv'E_{(v')})+(vE_{(v)}+v'E_{(v')})x)

直接変換  O \rightarrow O'' は、

 \qquad x''=C_{(v'')}(x-v''t)  \qquad t''=C_{(v'')}(t+v''E_{(v'')}x)

これらが等しくなるためには、

 \qquad C_{(v'')}=C_{(v')}C_{(v)}(1 - vv'E_{(v)})  \qquad \qquad  = C_{(v)}C_{(v')}(1-vv'E_{(v')})

よって、 E_{(v)}=E_{(v')}=const に限定される。 ここでの議論には不要だが、もう一つの関係式は速度の合成則を与える(v'' = v + v' ではない。念のため)。

この記事について

ほとんど、参考文献に挙げた菅野礼司さんの本からまる写しである。 この本が少し古くて入手が難しいことと、他にとりあげている教科書も見当たらないので blog で紹介することにした。 Lorentz 変換の導出は色々な方法があるが、この方法が一番しっくりくる。

時間や空間よりも同一性(等方,一様,対称)といった概念の方が基底の概念だということが良く分かる。 それは、たぶん人間の意識(の記号性, 同一性)の表れなのだろう。 一般的な要請だけから、速度上限が存在することが導ける。 真に理性的であれば、そこに何の疑問も感じないはずだ。 そこでモヤモヤするということは、理論に興味があるわけではなく、自分のバカさ加減に興味があるということだろうか。 速度の上限に対応する現象(光や電磁波)を人間が認識(発見)することに、何かしら必然があるのだろうか。 我々の住む世界(宇宙)には、たまたま速度の上限に対応する現象(光や電磁波)が存在する。 と、認めてしまうのがてっとり早い解決法だとは思う(笑)。 思考実験としては、人口知能はローレンツ変換を発見できるのだろうか、 もし、発見したとしたら速度の上限値はどんな値になるのだろうか。と、妄想は膨らむ。 なお、この記事では x と x' の極性を同じに(平行に)採っているが、 x と x' を逆向きに採った方が対称性が良いとの意見もある。

参考文献

  1. 菅野礼司, 物理学の論理と方法(上), 大月出版, 1983
  2. V.Yakovenko, Derivation of the Lorentz Transformation, Lecture Note of Univ. Maryland, 2004
  3. 井上猛, ローレンツ変換に付いて, 天界 2005 年 10月]
  4. はてなブログのTeX記法で数式を書く時用のチートシートと注意点