エアコン室外機の騒音対策は、ナベヤ(株)のビルトイン防振マウントが良いみたい
ナベヤ(株)のビルトイン防振マウント(軽量)を使ったエアコン室外機の防振対策を紹介します。
目標
目標は、低い周波数の振動 (~30Hz, ピアノの一番低い音くらい)がベランダの床から部屋の壁に伝わるのを防ぐことです。 周波数 f に対する伝達率は固有振動の周波数を fn を使って、f=3*fn の時 0.13 になるので、 fn を 10 Hz 程度まで小さくできれば、伝わる振動(30Hz )を一桁小さくできるはずです。
選定
以下の条件を確認しつながら防振マウントを選定します。 固有振動数( or バネ定数) / 許容加重 / 取り付け(ボルト直径, 安全性) / 耐候性 / 価格
取り付け
BBC35 シリーズより小さい防振マウントだと、取り付けネジが M6 になってエアコンには小さすぎるので BBC35 から選びます。BBC35 の取り付けは M8 なので、ワッシャを使えば不安なく取り付けられます。日曜大工では、こういう扱いやすさがなにより重要だったりします。
許容加重と固有振動数(バネ定数)
室外機は左右で重さが違うので、とりあえず、4 つの足に 7 + 7 + 3.5 + 3.5 = 21 kg の荷重を仮定してマウントを選定します(7kg はコンプレッサー側)。 BBC35D007 は荷重 5 kgf に対して固有振動数が 11 Hz、BBC35D013 は荷重10kgf に対して固有振動数が 11 Hz です。これらを組み合わせれば、室外機 (約 20kg) を保持できそうです。荷重が均等であれば BBC35D007 4つで対応できますが、室外機は左右の荷重に差があるので、許容加重の大きい BBC35D013 と組み合わせます。 コンプレッサー側は D013 x 2, ファン側に D007 x 2 を使うことにします。 カタログの固有振動数から求めたバネ定数は、D007 が 25 N/mm, D013 が 48 N/mm になりました。
耐候性
メーカーのカタログに以下のような記述があり、耐候性にもすぐれているようです。
エーテル系ポリウレタンで、水や紫外線に強く、ゴムのような劣化がほとんどありません。
価格
一個あたり 1500円くらいなので、4つで 6000円になりますが、防振性能、取り付けの簡便さ、安全性などを考えて、この製品におちつきました。
防振マウントの外観
外観については、このページの先頭の写真を参照してください。 BBC35D007 は手で簡単につぶれるくらいやわらかい素材です。 もちろん、手をはなせばきちんと復元します。 雨にもつよいし、耐候性もあるようです。金属部分がステンレスであることも安心材料です。
取り付け
手元のエアコンの台(プラロックというらしい)は下向きのボルトに対応していなかったので、M8 の穴をあけました。プライヤーで下側のステンレスのリムを回して固定します。M8 だと溝の中でナットが回ってしまうので、 細めのドライバーを挿してナットの回転を防ぎながら締めました。スプリングワッシャーを入れる厚みはなかったので、下の溝の中は平ワッシャーのみです。
4つ取り付けたところ。室外機を取り付けるときは、ホースに無理な力が加わらないように気をつける必要があるので、できれば二人以上で行った方が良いでしょう。
結果 (沈み込み量の計測)
曲線は固有振動数(11Hz)が最大荷重に対応するとして荷重と固有振動数の関係をグラフにしました。 曲線の色付きの部分は製品の許容加重です。荷重が小さい側にのばしました(灰色の線)。 曲線上の数値は沈み込み量 [mm] です。 A~D は 4つの足の沈み込み量(ノギスで計測)によるプロットです。
記号 | 説明 | 沈み込み [mm] | 加重 [kgf] |
---|---|---|---|
A | コンプレッサー側 前面 | 1.4 | 6.8 |
B | コンプレッサー側 後面 | 2.0 | 9.7 |
C | ファン側 前面 | 0.9 | 2.3 |
D | ファン側 後面 | 1.5 | 3.9 |
ほぼ期待通りの結果が得られ、低い周波数の振動も気にならなくなりました。 防振マウントの性能(低周波の低減)を最大に活かすには、追加ウェイトによる調整が必用です。 A, B は 荷重が 10kg, C,D は荷重が 5 kg になるようにウェイトを追加します。 今回は、体感で振動を十分に低減できたので、追加ウェイトによる調整は見送りました。
今回の室外機は小型のエアコンのものですが、大きいエアコンに比べて騒音/振動が大きいようです。 個体差なのか製品の特性なのかわかりませんが、小型のエアコンほど安く仕上げるために材料を削る影響が大きくなって、振動が出やすくなっているのではないかと疑っています。
注意/制限事項
今回の防振対策では、かなり単純な理論式にそって選定を行いました。固有振動数の式はこんな感じ。
fn [Hz] 固有振動数, k [N/m] ばね定数, g =9.8 [m/s2] 重力加速度, L [N] 加重, W [kg] 重量
実際は、バネ定数の動的/静的の違い、バネ定数の温度特性、減衰特性...などなど、いろいろ考慮する必用があるので、どこまで性能が出ているかよくわかりません。指でマウントに触ると、マウントの上と下とで振動が全然違う(下側の振動は分からない)ので、効果は体感できます。対策前後の振動を定量的に計測できれば良いのですが、低い周波数の計測は難しいみたいです。
もう少しお安く...
固有振動数の目標を 11Hz から 14Hz に緩和すれば、おなじナベヤ(株)の防振フット(軽量型)も良さそうです。例えば BFL20D030 (荷重が 3~7 kg) を 4 つ使って、4つの足すべての荷重が7kg になるようにウェイトを追加すれば、最大の効果が得られるはずです。こちらは 1 個 500円くらいなので 4 個で 2000円となります。ボルトが M5 なので、外形の大きい平ワッシャ(特寸?)を用意する必要がありそうです(エアコン側は M10で共通らしい)。我が家のケースでは、固有振動数 14Hz でも十分だったかな、と思っています。
他メーカーの防振ゴム
低い周波数まで対応するには、バネ定数を小さく抑える必要があります。その観点で、 最後まで迷ったのが、倉敷化工の軽量用防振ゴム KXA-25-25H でした。 防振性能(バネ定数=14.4 N/mm)は魅力的ですが、1つ当たりの支持荷重が 3 kgf なので小型の室外機でも 6~7 個使って支えることになります。取り付け難しそうなのであきらめました。こちらを使えば防振部品の値段は半分くらいになりそうです。ただし、取り付け板や加工などの手間を考えると、トータルの費用はあまり変わらないかもしれません。厚めの合板を塗装したプレート(室外機を置ける1枚板)を用意するとよい気もします。マウントを上下で挟むようにして、荷重の偏りに応じて防振ゴムを適宜配置すれば、今回のものよりも性能の高い防振装置を安価に実現できる可能性があります。プレートに室外機を置いただけだと、横滑りが怖いので、試すなら安全対策もお忘れなく(室外機をプレートに固定する)。
金属バネ
バネ定数と耐荷重でスプリングを検索して、ばね通販 スプリングネットの 11-2820 という製品にたどりつきました。 バネ定数が 4.9 N/mm と小さくて、全タワミ(28.9mm)まで使えるなら 1 つで 14kg まで対応できる。 実際は 10mm 程度のタワミで 1つあたり 5kg の荷重で使うのが良さそう。 スプリングの上に室外機をそのまま載せると、たぶん危なっかしい感じになりそうです。 やわらかなスプリングなのでシリンダー内に装着しないと危ないかもしれません。 その辺の安全確保にかんする知識がないので、スプリングの使用はあきらめました。